2019年02月10日

埼京線用E233系7000番台が「謎の改造」を受ける 相鉄線直通準備か


「謎の改造」が順次施されているE233系7000番台


東日本旅客鉄道(JR東日本)の一般型電車(※1)「E233系」は、いろいろな路線にいろいろな形態で展開されています。そのうち、埼京線(※2)や川越線(大宮~川越間)用の車両として投入されたのが「E233系7000番台」です。

最近、このE233系7000番台の運転台回りを中心に「謎の改造」が順次施されているようです。たまたま「謎の改造」を施された編成を見つけたので、簡単に紹介したいと思います。

(※1) 通勤路線用の「通勤型電車」と都市近郊路線用の「近郊型電車」を設計上統合した電車。通勤路線に投入されるものは「通勤タイプ」、近郊路線に投入されるものは「近郊タイプ」と呼ばれていて、両者ともに基本仕様は同一とされているが、投入線区の事情に合わせて一部設備をカスタマイズしている。
(※2) 埼京線は「運行系統名」で、正式な路線名ではない。正式な路線名は、大崎~池袋間が「山手線(貨物線)」、池袋~赤羽間が「赤羽線」、赤羽~大宮間が「東北本線(支線)」。

■総論 : 改造は相模鉄道(相鉄)直通のためか


相鉄はJR線(と東急線)を介した東京都内への直通を準備中


先に若干ネタバレを。E233系7000番台に対する改造が始まったのは2019年度下期に予定されている「相鉄・JR直通線」開業に向けた準備であると思われます。

相鉄・JR直通線は、その名の通り相模鉄道線とJR線で直通運転するための路線で、神奈川東部方面線の一部を構成しています。相鉄では最近、この相鉄・JR直通線と、同じく神奈川東部方面線を構成する「相鉄・東急直通線」のうち相鉄が運営する区間をまとめて「相鉄新横浜線」と名付けました(※3)。相鉄新横浜線の開業により、相鉄は今まで全くなかった東京都内への直通ルートを開拓できることになります。

で、少し話がわき道にそれそうになりましたが、相鉄・JR直通線は羽沢横浜国大駅から東海道本線(貨物線)、東海道本線(品鶴線:※4)を経て、大崎から埼京線に乗り入れる予定となっています。

(※3) 相鉄・東急直通線は、途中の新横浜駅(仮)から先は東京急行電鉄(東急)が運営。路線名称は相鉄に合わせる形で「東急新横浜線」となった。
(※4) 品川~新川崎~鶴見間を走る東海道本線の支線で、普段は運行系統として「横須賀線」と案内される。なお、正式な路線名としての横須賀線は、大船~久里浜間。


■改造点その1 : 防護無線機を2台設置できるスペースを設けた


ICカードR/Wのスペースが空けられ、従来の防護無線機には「JR防護無線」のラベルが


改造された車両の運転台を見ていくと、いくつか変わったことがあります。

まず、運転台の第2モニター横にある運転士用ICカードのリーダーライター(R/W)が撤去されました。そのさらに右側にある列車防護無線機(※5)は位置こそ変わっていませんが、「JR防護無線」というラベルが貼られました。要するに、ICカードR/Wをどかして、相鉄線用の防護無線機を設置するスペースが確保されたと考えるのが正解と思われます。

少し詳しい方ならご存じだと思いますが、相鉄は保安装置(ATSと列車無線装置)の規格を数年前にJRのそれと揃えました。しかし、防護無線機だけはJRとは異なるものを使っています。これはJRと同じ周波数帯を使うのを避けるためだと思われます。防護無線機まで共通化したら、JRと相鉄の相互で列車を止め合ってしまう可能性がありますしね()

ということで、直通が始まる頃合いまでに、相鉄用の防護無線機を追設する改造が行われ、運転台には2台の防護無線機が併存することになると思われます。

(※5) 周囲の列車に停止を促す「防護無線」を発信するための無線機。急停車後に「緊急を知らせる信号を受信したため~」と言われたら、防護無線を受信したと理解してOKです。


■改造点その2 : 運転士用ICカードR/Wを運転台左端に移設


どこに行ったと思ったらこんなところに


防護無線機をもう1台設置するために「撤去」された運転士用ICカードR/Wですが、JR東日本も相鉄も運転士さんは行路(シフト)を記録したICカードを持ち歩いていて、これをR/Wに挿入して行路表示などに使っています。なので、R/Wを完全撤去するのはアレです。

どこかにR/Wを移設したはず…と思って運転台をよく見たら、運転台左端にICカードR/Wのボックスが新設されていました。外付けR/Wは、デジタル無線用のモニター装置を追設した205系電車やJRに直通する東京メトロ車両でも見かけますが、E233系7000番台のそれはそれらより明らかにビッグサイズです。なぜこんなに大きいのでしょうか()

■改造点その3 : ホームドア用の無線連携装置が設置された(「横須賀線」区間用対策?)


無線式のホームドア連携装置が付いた


改造されたE233系7000番台には、日本信号製の無線式ホームドア連携装置(参考リンク)も追設されています

僕の知る限り、この装置を使ってホームドア制御をしているのは総武本線(快速線)の新小岩駅だけ。しかし、たった1駅だけのために車両側に大がかりな改造をするのもアレなので、総武本線(快速線)や直通先である運行系統としての「横須賀線」の駅に今後整備されるであろうホームドアも、新小岩駅と同様の無線連携式になると思われます

そう考えると、この改造は大崎から先、相鉄新横浜線に至るまでに通る横須賀線の各駅におけるホームドア対策の一環と考えるのが一番しっくり来ます(どの駅に停まるかどうかはまだ分かりませんが)。

あるいは、埼京線と川越線あるいは相鉄線のホームドアを無線連携式にする予定があるのでしょうか…? 相鉄線は全駅へのホームドア設置を表明済みですが、ホームドアの連携方法については分かっていませんから何とも言えない…。

■その他の変更点

改造済みのE233系7000番台には、他にも変更点があります。分かっている範囲で列挙すると…

・中間連結器(連結器の形状変換アダプター)が常備された
・「統合型保安装置」(※6)が換装された
・TASC(※7)が追設された
・車両の上よりにもドアコック位置表記が付いた

1つめから3つめまでは相鉄線の仕様に合わせた対策、4つめは相鉄線を含むホームドア設置に向けた対策だと思われます。見逃しているだけで、他にも変更点があるかもしれません…。

ともあれ、相鉄新横浜線と埼京線の直通運転に関する詳報はいつ出るのか、楽しみにしとこうと思います。

(※6) 複数種のATSやATCを1つの装置に統合したもの。
(※7) 定位置停止装置。ホームドア設置路線やワンマン運転路線などで、運転士の負担を軽減するために列車の停車を自動で行うために設置されている。TASCに発車からの自動運転機能を加えると「ATO(列車自動運転装置)」になる



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Posted by せう at 19:25│Comments(1)鉄道
この記事へのコメント
初めまして。
改造内容について細かく観察されておりとても参考になります。

ホームドア無線連携装置についてですが、まずは新駅の羽沢横浜国大駅で使用するのではないかと私は思っています。
直通運転開始は今年12月という報道がなされていますが、該当区間内にその時点でホームドア設置予定の駅は羽沢横浜国大駅と海老名駅(19年度末予定)のみのため、JR線内向けだとしたら流石に早すぎるように感じます。
Posted by YCS3120 at 2019年02月11日 22:24
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