2021年03月15日

E257系2500番台のATSが興味深い


機器更新のついでにATSが換装されてるんですよね、実は

伊豆箱根鉄道の歴史的な日を見届けるために、新車(新品ではない)であるE257系2500番台に乗ってきました。

このE257系2500番台は元々、「E257系500番台」として千葉エリアを発着する特急列車に使われてきた電車です。東海道本線の特急への転用に合わせて「機器更新」を行い、それによって車両番号に「2000」がプラスされ、番台区分が変わりました。

で、鉄道車両としての「保安装置」に目を向けると、E257系500番台では「ATS-SN形」と「ATS-P形」を搭載していました。それに対して、2500番台では「ATS-Ps形」と「ATS-P形」を搭載しています。ATS-SN形の車上装置をATS-Ps形の車上装置に換装して、関連するインジケーターを運転台に追設しただけかな…と思っていたのですが、実はそうではないっぽいです。

■ATS-Ps表示器が「統合型保安装置」用っぽい

運転台に追設されたATS-Ps表示器に違和感が…

ATS-Ps形は、ATS-SN形(国鉄時代から使われている「ATS-S形」に即時停止機能を追加したアナログATS)にパターン制御(速度曲線に基づく停止制御)機能を追設したものです。「都会のATS」ことATS-P形(パターン制御に対応するデジタルATS)とは異なり、車両側、地上(線路)側共に改造工数を減らせることがメリットであることから、JR東日本は在来線のうち、ATS-P形を整備していない地方線区を中心に導入してきました。

ATS-Ps形は「ATS-SN形の上位互換」という扱いなので、同ATSを搭載している車両はATS-S形ベースの各種ATSを備える線区でも保安性を確保できます。伊豆箱根鉄道はATS-S形ベースのATSを整備しているので、E257系2500番台のATS-Ps形を使って安全を守っていることになります。


一般的なATS-Ps形表示器

普段走る線区を考えると、E257系2500番台はわざわざATS-Ps形に換装する必要はないのですが、恐らくは今後JR東日本の地方線区を走る可能性を想定して換装したのだろうと思います。

と、本題から外れそうになったのですが、E257系2500番台の運転台に追設されたATS-Ps表示器が「僕の知ってるやつと違う」ものだったのです。どちらかというと、最近増えている「統合型保安装置」(複数のATSやATC/ATACSの保安機能を1台のハードウェアで処理する装置)用の外付け表示器に近い見た目をしています。E129系に付いてるやつとそっくりです(写真は撮ってないみたいで出てきませんでしたorz)。


既存のATS-P用インジケーターは生きています

先述の統合型保安装置用の外付け表示器は、ATS-Ps形とATS-P形両方の表示器を統合しています。なのでATS-P形に関する表示もまとめて行えるはずです。

ただし、E257系2500番台(旧500番台)ではATS-P形に関するインジケーターは既設のものを使っています(非常ブレーキ動作のインジケーターは追設ですが)。まあ、元々付いているものを大きく変更するのも何だしということだと思われます。

■ATS-P形区間でも表示器が「生きている」……だと!?

ATS-P形区間なのにパターン表示が付いてる…!!

運行開始直後ということもあり、運転開始初日(3月13日)は運転台回りの観察は非常に盛況でした。そこで2日目(3月14日)、熱海の海を見に行った帰りに、熱海~修善寺間で改めてE257系2500番台に乗って前面展望という名の運転台観察をしてみました。

すると、ATS-P形区間なのに追設された表示器は“オン”になっていました。それどころか、車上装置が演算したパターンをLEDで表示していたのです。これは、統合型保安装置を搭載するE129系と同様の挙動です。

■ATS切り替え時の挙動も興味深い

ATS切り替えでクリアされます(東海道本線→駿豆線)

上の動画は、東海道本線から駿豆線に転線する際のATS切り替えの様子を動画に収めたものです。185系では三島駅では乗務員交代の際にブレーキ弁の取り外し(≒ATSのオフ)→再取り付け(≒ATSのオン)が行われていたため、ATSの切り替えの様子を見られませんでした。それに対し、E257系2500番台では乗務員交代をATSを切らずに行うようになったので、三島駅発車後にATSの切り替えが見られるようになったのです。

注目は、ATS-P形からATS-Ps(S)形への切り替え時です。まず、E129系では聞けないATS-S形の警報音が鳴るようになっています。JR東日本の従来型のATS-P形では、「ATSの切り替え時にATS-Ps(S)形の電源をオン/オフにする」ようになっています。そのため、ATS-P形からPs(S)形への切り替え時に、ATS-Ps(S)形の警報音が鳴るようになっています。

それに対して、E129系の統合型保安装置は「ATSの切り替えは他方のATSの機能のマスク(無効化)」で行うようになっています。そのため、ATS-P形からATS-Ps(S)形の切り替え時にATS-Ps(S)形の警報音が鳴りません。これは、JR東海のATS-P形車上装置(ATS-PT形)と似た挙動です(全く同じではありませんが、詳しい説明は割愛します)。

E257系2500番台の保安装置は、E129系の統合型保安装置と同様にATS-P形のパターンも表示できる一方で、従来のATS-P形と同様にATS-Ps(S)形への切り替え時にATS-Ps(S)形の警報音が鳴るようになっています。ある意味で、新旧の「折衷」です。

加えて、ATS-P形→Ps(S)形の切り替え時に「ATSがSに切り替わりました。表示灯を確認してください」という音声が入るようになりました。これってE129系を含む最近の車両でもありましたっけ…?

■ATS好きはE257系2500番台に注目すべき

熱海駅での切り離しも手順が変わりましたね

ということで、ATS好きの皆さんにとって、E257系2500番台は非常に興味深い車両になっています。「新品ではない新車」であることには賛否が分かれるでしょうが、観察に値する車両であることは間違いありません。ぜひ、伊豆箱根鉄道駿豆線まで乗り通してみてください!(これが言いたかったw)


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Posted by せう at 13:05│Comments(3)鉄道
この記事へのコメント
突然のコメント失礼いたします。
今回の保安装置の記事、大変興味深く拝読させていただきました。

記事内にて、保安装置切替時の音声を取り上げられておりましたが、E129系においてもP→S切替時のみ、表示灯を確認する旨の案内音声が再生されております。

生憎、私が撮影した動画はございませんが、高架化後の新潟駅を進出するE129系の前面展望動画にて、こちらの音声は確認することが出来るかと思われます。

今回の記事を通して、修善寺行きの踊り子もぜひ乗車したいと関心を持つことが出来ました。ありがとうございます。
Posted by はてるま at 2021年05月08日 23:50
> ATS-P形→Ps(S)形の切り替え時に「ATSがSに切り替わりました。表示灯を確認してください」という音声が入る
逆に東京行きが三島駅の出発信号機を越える(ATS-PTの地上子を踏んだ場合に「ATSがPに切り替わりました」と音声が入るのでしょうか?
Posted by こだま at 2021年05月29日 17:42
>>はてるまさん
お返事、遅くなりました。確か新潟駅の高架線はATS-P形のみ整備
されているんでしたっけ。音声チェックにはもってこいですね。

E129系は水上~越後湯沢で何度か乗ったことがあるんですけど、
なぜかいつも先客の方がいて、マトモに観察できておらず…orz

>>こだまさん
すみません、逆方向はまだチェックしていません…。一応、1番線
入線後、停車目標までATSの切り替えは行われません(ATS-Sのまま)。

切り替わるのは乗務員交代して出発した後ですね。今度実家に帰る
際にチェックしようかと思います。
Posted by せうせう at 2021年05月31日 19:33
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