2021年03月13日
伊豆箱根鉄道駿豆線にとって「初」づくしの日
3月13日、JRグループがダイヤ改正を行いました。北海道から九州まで、ネタに尽きない改正となったわけですが、静岡県三島市生まれの僕としては、東京/新宿/池袋~伊豆急下田/伊東/修善寺間を結ぶ特急踊り子号がE257系2000番台/2500番台という新車(新品ではない)に置き換わったことが一番のトピックなのです。
新品ではないとはいえ、この新車は三島~修善寺間の伊豆箱根鉄道駿豆線に非常にたくさんの「史上初」をもたらしました(実は、大雄山線を含む伊豆箱根鉄道全体でも初なものたちです)。
■史上初の「特急料金」
新車への置き換えに伴い、特急踊り子号はJR東日本における首都圏発着の全車両指定席特急の仲間入りを果たしました。修善寺行き編成は途中で“別会社”であるJR東海の東海道本線を通るわけですが、普通列車用グリーン券の料金全面見直し時と同様に、東海道本線の熱海~三島間においてJR東日本と同じ特急料金体系を導入しました。
で、駿豆線なのですが、実は今まで「特急料金」の設定がありませんでした。三島以遠の駅から(まで)自由席に乗る場合は三島駅から(まで)の自由席特急券が発券され、指定席に乗る場合は駿豆線内の停車駅から(まで)の指定席券を発行できるものの、特急料金の計算は三島駅から(まで)行っていました。「じゃあ駿豆線内だけ乗りたい人は?」と思う所ですが、これは通学定期券を除く乗車券だけで乗車できたのです(繁忙期を除く)。
ちょっと前置きが長くなりましたが、特急踊り子号がJR線内で全席指定席化されることに伴い、3月13日から駿豆線で史上初の特急料金(特急券)が設定されました。特急料金は区間を問わず一律200円(子供は100円)です。
駿豆線内だけ乗る場合は、駿豆線内の踊り子号の停車駅(三島、三島田町、大場、伊豆長岡、大仁、修善寺)で写真のような硬券様式で「座席未指定特急券」を購入できます。JRの首都圏発着の全車指定席特急では、車内で特急券を買うと割高になりますが(普通列車用グリーン券と同じ)、駿豆線内の料金は車内で買っても同額です。ただし、駿豆線内だけの乗車は座席を指定できません。座席指定を受けたい場合は、面倒(?)でもJR線内の駅を含む(≒三島から/までを含む)特急券を用意する必要があります。
■史上初の「ボルスタレス台車」
今まで、駿豆線を走る電車の台車には「ボルスタアンカー(枕梁)」が付いていました。E257系は、駿豆線としては初めてボルスタアンカーのない「ボルスタレス台車」を装着した車両です。
「だから何なの?」と言われると何ですが、近代的な台車を履く電車が走るようになったのが感動的なのですよ…。
■史上初の「VVVFインバーター制御」「回生ブレーキ」
駿豆線では今まで、直流モーターを抵抗で制御する、いわゆる「抵抗制御」の電車だけ走っていました。ブレーキを掛ける際に発生する電流を架線に返せる「回生ブレーキ」を備える電車は、逆に走ったことがありませんでした。
E257系は、駿豆線初のVVVFインバーター制御(交流モーター)の電車であり、同線初の回生ブレーキを掛けられる電車です。インバーターがモーターを動かしたり回生ブレーキをかけたりするときに奏でる独特の音を、駿豆線でも楽しめるようになったのです。
ちなみに、修善寺発着の踊り子号に充当されるE257系2500番台なのですが、運転台に注目すべき変化があります。
この番台は、元々千葉エリアを走っていたE257系500番台の機器更新(VVVFインバーターや伝送装置などの主要機器の換装)を行った上で、東海道本線の特急に充当するための最小限の改造を加えて誕生したものです。改造前の運転台にはTIMS(伝送装置)用のモニターが2台設置されていたのですが、改造後はサブディスプレイが撤去されました。
その撤去された跡には、ATS-P型の「非常ブレーキ」インジケーターと「力行性能選択スイッチ」なるものが設置されました。非常ブレーキインジケーターの増設は、E233系以前のJR東日本のATS-P型搭載電車で順次進められてきたものです(E233系以降の車両は標準対応 or TIMSのソフトウェア改修で対応した模様)。なので、特段の特別感はありません。
問題は力行性能選択スイッチです。このスイッチは「高」と「低」の2つのボタンから構成されており、その名の通り力行(加速)性能を切り替えるために設置されたものと思われます。ダイヤ改正当日で運転台回りが大混雑していたため、じっくりと観察できなかったのですが、少なくとも駿豆線内ではこのスイッチを「低」にして運転していました。
駿豆線内ではE257系2500番台の“本来の”力行性能だと何らかの問題が発生するのでしょうか…?
■史上初の「左手ワンハンドルマスコン」「伝送装置」
最近の電車や気動車(ディーゼルカー)は、一部の地域を除いてマスコン(主幹制御器、加速レバー)とブレーキハンドル(ブレーキ設定器)を一体化した「ワンハンドルマスコン」が主流です。JRグループを見渡すと、JR西日本やJR四国以外は左手で操作するワンハンドルマスコンが広く普及しています(むしろ、これら2社はなぜワンハンドルマスコンにしないのか…)。
で、伊豆箱根鉄道ですが、1979年から導入している自社設計の電車「3000系」から右手操作のワンハンドルマスコンを導入しています。地方の私鉄としてはダントツの早期導入組で、親会社の西武鉄道よりも早くワンハンドル操作を実現しています。そしてE257系2500番台は、駿豆線では初めての左手操作のワンハンドルマスコンを備える電車です。右手と左手、両方のワンハンドルマスコンを見られる路線になったのです。
ちなみに、特急踊り子号が乗り入れるもう一方の私鉄である伊豆急行では、親会社から購入して導入した8000系が両手操作のワンハンドルマスコンを備えています。8000系は日本で初めてワンハンドルマスコンを導入した車両だったりするんですよね。もっというと、日本で唯一、JR線内を走る両手操作ワンハンドルマスコン車両でもあります。
先ほども少し触れましたが、E257系2500番台はTIMSという伝送装置を採用しています。TIMSでは、力行指令、非常ブレーキ以外のブレーキ指令はもちろん、車両のあらゆる情報を一括して管理しています。そのため、従来の電車と比べると信号線の数を大幅に削減できました。
E257系2500番台は、駿豆線では初めての伝送装置を採用する車両です。VVVFインバーター制御や回生ブレーキと合わせて、非常にインパクトのある近代化っぷりといえます。
■史上初の「シングルアームパンタグラフ」
電車や電気機関車の大半は、架線から電気を取って走ります。その集電装置のことを「パンタグラフ」と言います。最近は、集電舟を“片腕”で支える「シングルアームパンタグラフ」が主流なのですが、現時点において、伊豆箱根鉄道ではシングルアームパンタグラフを備える電車や電気機関車は1両もありません。
が、E257系2500番台は駿豆線では初めてのシングルアームパンタグラフ装備車となりました。駿豆線が、本当に一気に“近代化”しました…。
■頑張れ! E257系! 頑張れ! 駿豆線!
このように、E257系は駿豆線(伊豆箱根鉄道)に「初」をたくさんもたらしました。前日まで走っていた国鉄185系電車もいいですが、やはり個人的には近代的な車両により魅力を感じるんですよね…。駿豆線を一気に“近代化”したE257系にはこれから頑張ってほしいところです。
というか、かつて駿豆線で通学をしていた身からすると、駿豆線には近代化をしてもらいたいなぁ、と…。
新車への置き換えに伴い、特急踊り子号はJR東日本における首都圏発着の全車両指定席特急の仲間入りを果たしました。修善寺行き編成は途中で“別会社”であるJR東海の東海道本線を通るわけですが、普通列車用グリーン券の料金全面見直し時と同様に、東海道本線の熱海~三島間においてJR東日本と同じ特急料金体系を導入しました。
で、駿豆線なのですが、実は今まで「特急料金」の設定がありませんでした。三島以遠の駅から(まで)自由席に乗る場合は三島駅から(まで)の自由席特急券が発券され、指定席に乗る場合は駿豆線内の停車駅から(まで)の指定席券を発行できるものの、特急料金の計算は三島駅から(まで)行っていました。「じゃあ駿豆線内だけ乗りたい人は?」と思う所ですが、これは通学定期券を除く乗車券だけで乗車できたのです(繁忙期を除く)。
ちょっと前置きが長くなりましたが、特急踊り子号がJR線内で全席指定席化されることに伴い、3月13日から駿豆線で史上初の特急料金(特急券)が設定されました。特急料金は区間を問わず一律200円(子供は100円)です。
駿豆線内だけ乗る場合は、駿豆線内の踊り子号の停車駅(三島、三島田町、大場、伊豆長岡、大仁、修善寺)で写真のような硬券様式で「座席未指定特急券」を購入できます。JRの首都圏発着の全車指定席特急では、車内で特急券を買うと割高になりますが(普通列車用グリーン券と同じ)、駿豆線内の料金は車内で買っても同額です。ただし、駿豆線内だけの乗車は座席を指定できません。座席指定を受けたい場合は、面倒(?)でもJR線内の駅を含む(≒三島から/までを含む)特急券を用意する必要があります。
■史上初の「ボルスタレス台車」
今まで、駿豆線を走る電車の台車には「ボルスタアンカー(枕梁)」が付いていました。E257系は、駿豆線としては初めてボルスタアンカーのない「ボルスタレス台車」を装着した車両です。
「だから何なの?」と言われると何ですが、近代的な台車を履く電車が走るようになったのが感動的なのですよ…。
■史上初の「VVVFインバーター制御」「回生ブレーキ」
駿豆線では今まで、直流モーターを抵抗で制御する、いわゆる「抵抗制御」の電車だけ走っていました。ブレーキを掛ける際に発生する電流を架線に返せる「回生ブレーキ」を備える電車は、逆に走ったことがありませんでした。
E257系は、駿豆線初のVVVFインバーター制御(交流モーター)の電車であり、同線初の回生ブレーキを掛けられる電車です。インバーターがモーターを動かしたり回生ブレーキをかけたりするときに奏でる独特の音を、駿豆線でも楽しめるようになったのです。
ちなみに、修善寺発着の踊り子号に充当されるE257系2500番台なのですが、運転台に注目すべき変化があります。
この番台は、元々千葉エリアを走っていたE257系500番台の機器更新(VVVFインバーターや伝送装置などの主要機器の換装)を行った上で、東海道本線の特急に充当するための最小限の改造を加えて誕生したものです。改造前の運転台にはTIMS(伝送装置)用のモニターが2台設置されていたのですが、改造後はサブディスプレイが撤去されました。
その撤去された跡には、ATS-P型の「非常ブレーキ」インジケーターと「力行性能選択スイッチ」なるものが設置されました。非常ブレーキインジケーターの増設は、E233系以前のJR東日本のATS-P型搭載電車で順次進められてきたものです(E233系以降の車両は標準対応 or TIMSのソフトウェア改修で対応した模様)。なので、特段の特別感はありません。
問題は力行性能選択スイッチです。このスイッチは「高」と「低」の2つのボタンから構成されており、その名の通り力行(加速)性能を切り替えるために設置されたものと思われます。ダイヤ改正当日で運転台回りが大混雑していたため、じっくりと観察できなかったのですが、少なくとも駿豆線内ではこのスイッチを「低」にして運転していました。
駿豆線内ではE257系2500番台の“本来の”力行性能だと何らかの問題が発生するのでしょうか…?
■史上初の「左手ワンハンドルマスコン」「伝送装置」
最近の電車や気動車(ディーゼルカー)は、一部の地域を除いてマスコン(主幹制御器、加速レバー)とブレーキハンドル(ブレーキ設定器)を一体化した「ワンハンドルマスコン」が主流です。JRグループを見渡すと、JR西日本やJR四国以外は左手で操作するワンハンドルマスコンが広く普及しています(むしろ、これら2社はなぜワンハンドルマスコンにしないのか…)。
で、伊豆箱根鉄道ですが、1979年から導入している自社設計の電車「3000系」から右手操作のワンハンドルマスコンを導入しています。地方の私鉄としてはダントツの早期導入組で、親会社の西武鉄道よりも早くワンハンドル操作を実現しています。そしてE257系2500番台は、駿豆線では初めての左手操作のワンハンドルマスコンを備える電車です。右手と左手、両方のワンハンドルマスコンを見られる路線になったのです。
ちなみに、特急踊り子号が乗り入れるもう一方の私鉄である伊豆急行では、親会社から購入して導入した8000系が両手操作のワンハンドルマスコンを備えています。8000系は日本で初めてワンハンドルマスコンを導入した車両だったりするんですよね。もっというと、日本で唯一、JR線内を走る両手操作ワンハンドルマスコン車両でもあります。
先ほども少し触れましたが、E257系2500番台はTIMSという伝送装置を採用しています。TIMSでは、力行指令、非常ブレーキ以外のブレーキ指令はもちろん、車両のあらゆる情報を一括して管理しています。そのため、従来の電車と比べると信号線の数を大幅に削減できました。
E257系2500番台は、駿豆線では初めての伝送装置を採用する車両です。VVVFインバーター制御や回生ブレーキと合わせて、非常にインパクトのある近代化っぷりといえます。
■史上初の「シングルアームパンタグラフ」
電車や電気機関車の大半は、架線から電気を取って走ります。その集電装置のことを「パンタグラフ」と言います。最近は、集電舟を“片腕”で支える「シングルアームパンタグラフ」が主流なのですが、現時点において、伊豆箱根鉄道ではシングルアームパンタグラフを備える電車や電気機関車は1両もありません。
が、E257系2500番台は駿豆線では初めてのシングルアームパンタグラフ装備車となりました。駿豆線が、本当に一気に“近代化”しました…。
■頑張れ! E257系! 頑張れ! 駿豆線!
このように、E257系は駿豆線(伊豆箱根鉄道)に「初」をたくさんもたらしました。前日まで走っていた国鉄185系電車もいいですが、やはり個人的には近代的な車両により魅力を感じるんですよね…。駿豆線を一気に“近代化”したE257系にはこれから頑張ってほしいところです。
というか、かつて駿豆線で通学をしていた身からすると、駿豆線には近代化をしてもらいたいなぁ、と…。
E257系2500番台のATSが興味深い
JRの隣駅同士なのに切符を買えない区間を知ってますか?
E233系のJR東海エリアにおける自動放送を運良く全部聴けた件(下り)
東海道線の新駅「羽沢横浜国大駅」について
埼京線用E233系7000番台のさらなる「謎の改造」 相鉄用防護無線機搭載開始
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Posted by せう at 19:00│Comments(0)
│鉄道
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