2021年02月14日

JRの隣駅同士なのに切符を買えない区間を知ってますか?


JRが発足して間もなく34年ですね…


Twitterとかでは書き切れないことをブログに書きたいものの、なかなかブログに書く時間が取れなかったせうです。今日こそはと決意(?)して、ブログをしたためることにしました。

書きたいネタはいろいろありすぎて大変なのですが、このエントリーではJR線で隣駅同士なのに、JRでは切符を買えない区間があるというネタです。まあ、分かる人にはすぐにピンと来るのでしょうが、沿線外の人にはあんまり知られてないと思うので…。

■常磐線の北千住駅で覚える違和感


JR北千住駅の自動券売機コーナーの近距離運賃表。遠目に見て違和感を覚える人はいますかね…?


JR常磐線は、東京都荒川区の「日暮里駅」から宮城県岩沼市の「岩沼駅」までを結ぶ鉄道路線です。「え、常磐線は上野駅からじゃないの?」と思ったあなたは素人です。上野~日暮里間は東北本線なのです。日暮里駅は立派な起点駅なのですが、岩沼方面に折り返すポイント類はないため、純粋に常磐線内だけで折り返すことは不可能です…(終点の岩沼駅では日暮里方面に折り返せます)。

ちなみに、日暮里駅は東北本線の運賃上のルート分岐駅でもあります。日暮里~赤羽を含む乗車券を持っている場合、王子経由(いわゆる「京浜東北線」)でも尾久経由(いわゆる「宇都宮線」)でも、距離の短い王子経由で運賃を計算できます(途中下車できる乗車券の場合はどちらのルートの駅でも途中下車可能です)。

…と、話がわき道にそれそうになりましたが、起点の日暮里駅から最初の大規模駅は、東京都足立区にある「北千住駅」です。東武鉄道の伊勢崎線(通称「東武スカイツリーライン」)を始めとする複数の会社の複数の路線が乗り入れる交通の要衝でもあります。

この北千住駅のJRの自動券売機コーナーの運賃表を見てみると、おかしい所があります。一見すると、JR東日本によくある運賃表にしか見えないのですが、おかしい所があります。


北千住と亀有の間が「省略」されている?

おかしい所に寄ってみました。何と「北千住駅」と「亀有駅」の間がなぜか省略されているのです。JR常磐線の旅客駅(人の乗り降りができる駅)を日暮里駅から列挙すると日暮里、三河島、南千住(ここまで荒川区)、北千住、綾瀬(ここまで足立区)、亀有、金町(ここまで葛飾区)…。そう、旅客駅として隣にあるはずの「綾瀬駅」が省略されているのです。

■常磐線の綾瀬駅に行ってみると…?


綾瀬駅に来てみたのですが…

ということで、北千住駅の隣にある「綾瀬駅」に来てみました。綾瀬駅は足立区と葛飾区の区境付近にありますが、駅自体は足立区にあります。上の写真は北千住寄りにある「西改札口」ですが、何かJR東日本の駅とは雰囲気が違うように見えます。


綾瀬駅は東京地下鉄(東京メトロ)の管轄です


案内看板のインターフェイスは東京地下鉄準拠です

まあ、それもそのはずです。実は常磐線の綾瀬駅は、東京地下鉄(東京メトロ)が管理する駅で、JR東日本の駅ではあるものの同社は管轄していません。

常磐線の各駅停車は、この綾瀬駅を境界駅として東京地下鉄千代田線と相互直通運転をしています。相互直通運転における境界駅は、直通パートナーのいずれかの会社の管轄とし、他社は管轄する会社に業務を委託することが一般的です。千代田線と常磐線の相互直通運転では、東京地下鉄が綾瀬駅を管轄し、JR東日本は同社に駅の業務を委託しているということです。


東京特別区内の"JR駅"なので「東京都区内」の対象駅でもあります

とはいえ、綾瀬駅はJR東日本の駅でもあり、東京特別区内に所在します。そのため、JRの旅客鉄道会社(※1)の運賃ルールにおける「東京都区内」の対象駅となります。東京都区内の基準駅である東京駅から(まで)片道200km超の普通乗車券を持っていれば、その乗車券で綾瀬駅から(まで)乗車することも可能です。駅名標にも、東京都区内の適用対象であることを示す「区」の文字がしっかり書かれています。

(※1)JR北海道、JR東日本、JR東海、JR西日本、JR四国、JR九州



JR東日本仕様の券売機が設置されています


以前紹介した東海道本線の「羽沢横浜国大駅」とは異なり、綾瀬駅にはJR東日本仕様の自動券売機が設置されています。切符の地紋もJR東日本のものです。


運賃表は微妙に東京地下鉄デザインです(西改札口では820円区間までしか掲出されていませんが、東改札口はしっかりと1690円区間まで掲出されてます)

ただし、こちらも羽沢横浜国大駅とは異なり、近距離運賃表は東京地下鉄がデザインしたものになっています。もっとも、見た目はJR東日本のそれと近いです。西改札口では820円区間までの駅しか掲載されていませんが、メインの東改札口にある運賃表ではしっかりと綾瀬駅から100km以内(1690円区間まで)の駅を出しています。もちろん、100km以内にあるJR他社(JR東海の御殿場線)の駅も掲載されています。

もう1つ、普通のJR東日本の近距離運賃表と異なる部分として、千代田線の「西日暮里駅」でJR線に乗り換えた場合の運賃も併記されています。併記の範囲は、千代田線の西日暮里駅から連絡できる(乗り継ぎできる契約となっている)駅となっており、全ての駅ではありません。西日暮里駅から近い駅が目的地の場合、乗り継ぎで行くと運賃は割高ですが、同駅から少し離れた駅が目的地である場合は、北千住駅で乗り換えて全区間JR線で行くよりもトータルの運賃が安くなる場合があります。

なお、西日暮里駅で乗り換えるJR線への連絡切符は、東京地下鉄の券売機で売っています。JR用の自動券売機では買えないので注意してください。

…と、かなりわき道にそれました。東京地下鉄がデザインしたJRの近距離運賃表ですが、これにも違和感があります。フォントだったり、先述の西日暮里駅接続の連絡運賃の記載だったり…ではありません。JR北千住駅のそれと類似した違和感が…。


北千住駅までの運賃が空欄になっている!!

JR北千住駅における綾瀬駅のようにないことにされるというひどい仕打ちではないものの、JR線として隣の駅である北千住駅までの運賃が"空欄"となっています。

北千住駅と綾瀬駅の近距離運賃表を総合する、JR常磐線の隣駅同士である「北千住駅」と「綾瀬駅」は、互いを発着する乗車券(切符)は買えない(売っていない)ということが分かるかと思います。事実、今回の撮影では割愛していますが、全国のJR旅客鉄道会社にあるマルス(旅客販売総合システム)端末で北千住駅と綾瀬駅を行き来する切符を求めると、"きちんと"エラーが出て買えないようになっています。

■JRの約款に"買えない"と明記されている「北千住~綾瀬」の乗車券



四国旅客鉄道(JR四国)の旅客輸送規則の「第16条の5」(PDF形式)

JRの旅客鉄道会社は「輸送約款」と呼ばれる規約群に基づいて輸送サービスを提供しています。その内容は、ごくごく一部の内容を除いて、各旅客鉄道会社で共通です。

で、各旅客鉄道会社の「旅客輸送規則」の第16条の5にはこんなことが書かれています。

常磐線北千住・綾瀬間相互発着となる旅客に対しては、乗車券類の発売を行わないものとする。

つまり、JRの旅客鉄道会社では、北千住駅と綾瀬駅を相互に発着する乗車券はもちろん、(あり得ませんが)指定席券、急行券、特別急行(特急)券、グリーン券…など、あらゆる切符を発券できないとルールで明記しているのです。

わずかひと駅なのですが、JR線としては(ここポイント)行き来はできないのです。

■北千住~綾瀬間の乗車券は東京地下鉄で買える(特定運賃)


綾瀬~北千住間の普通乗車券は「特定運賃」です

定期乗車券も「特定運賃」です

「北千住と綾瀬は行き来できないの!?」と思った人もいると思いますが、安心してください。北千住と綾瀬の相互間の乗車券類は、千代田線を所管する東京地下鉄が発売しています。ただし、距離制運賃ではなく区間で運賃を定義する「特定運賃」を適用します

東京地下鉄の「旅客営業規定」(PDFファイル)の中で、この特定運賃に関連する項目を抜粋すると以下の通りです(図や表は割愛します)。

・第52条 前条の規定にかかわらず、綾瀬・北千住間相互発着となる旅客の片道普通旅客運賃は、次のとおりとする。
・第58条 前条の規定にかかわらず、綾瀬・北千住間相互発着となる旅客の定期旅客運賃は、次のとおりとする。この場合、東日本旅客鉄道株式会社特定者用定期乗車券発売規則による被保護世帯の世帯員に対しては、特定者定期乗車券を発売する。
・第64条 第62条の規定にかかわらず、綾瀬・北千住間相互発着となる旅客の回数旅客運賃は、次のとおりとする。
・第68条 第66条の規定にかかわらず、綾瀬・北千住間相互発着となる団体旅客に対しては、次のとおり普通旅客運賃の割引を行う。
・第103条 前条の規定にかかわらず、綾瀬・北千住間相互発着となる回数乗車券の様式は、次のとおりとする。

かなりこと細かに、綾瀬と北千住(※2)の間の運賃類を「例外」としています。この特定運賃は、全て"割安"なJR東日本の運賃規定に合わせて設定されています。

東京地下鉄の内規では、両駅相互間の普通乗車券と回数券類は両駅でのみ発売します。その他の乗車券類は「東京メトロお客様センターにお問い合わせください」としていますが、両駅の窓口や一部の定期券うりばで買えるようです。

(※2)東京地下鉄の基準では、千代田線は常磐線とは逆に北綾瀬(綾瀬)側を起点としているため順番が逆になる

■北千住~綾瀬間の運賃扱い

恐らく、ここまで来て何となく察した人もいるかと思いますが、千代田線の綾瀬~北千住間は、乗車経路によって運賃計算方法が変わります。何個かパターンを上げて紹介します。

1.綾瀬~北千住のみ乗車

綾瀬~北千住のみ乗車した場合は、東京地下鉄に乗ったと見なします。ただし、JR東日本と同額の特定運賃を適用します

2.北綾瀬~北千住のみ乗車

北綾瀬(千代田線)~北千住間のみを乗車した場合は、東京地下鉄に乗ったと見なします。運賃の計算は通常通りで、普通乗車券であれば170円です(ICカード運賃は割愛します、以下同様)。

3.常磐線の亀有以遠~北千住を乗車

常磐線の亀有以遠から綾瀬を経由して北千住という経路を使う場合は、綾瀬~北千住間をJR線とみなして運賃を通算します

4.綾瀬~北千住以遠のJR線を乗車

綾瀬から北千住を経由して北千住以遠のJR線各駅に向かう場合は、綾瀬~北千住間をJR線とみなして運賃を通算します。北綾瀬から乗車した場合は、北綾瀬~綾瀬間は東京地下鉄線の運賃(普通乗車券で170円)を適用し、綾瀬からJR線としての運賃計算を開始します。

5.常磐線の亀有以遠~北千住~東京地下鉄線を乗車

常磐線の亀有以遠から北千住を経由して東京地下鉄線に向かう場合は、綾瀬~北千住間をJR線と見なしてJR線内の運賃を計算し、北千住を起点として東京地下鉄線の運賃を計算します。

■なぜこうなった?

全ては千代田線のせい?

さて、常磐線の北千住~綾瀬間、そして千代田線の綾瀬~北千住間はかなり特殊な区間で、乗車経路によってJR線扱いだったり東京地下鉄線扱いだったり、はたまた東京地下鉄線扱いだけど特定運賃だったりとかなり不思議な感じとなっています。こうなってしまったのには、歴史的経緯があります。

帝都高速度交通営団(営団、現在の東京地下鉄)が千代田線を建設することに伴い、日本国有鉄道(国鉄)は、常磐線の綾瀬(ここポイント)~取手間に各駅停車専用の複線(緩行線)を新設し、千代田線と相互直通運転をすることにしました。しかし、ここで問題になるのが、緩行線の起点が綾瀬駅であるという所です。緩行線の完成に伴い、北千住駅には"常磐線の"各駅停車が全く停車しなくなってしまうのです。

常磐線の北千住駅から亀有駅や金町駅に行きたい場合、快速列車/電車の停車駅である松戸駅までいったん行って、反対方向(綾瀬駅方面)に向かう各駅停車に「折り返し乗車」を…となると非常に面倒であることは目に見えています。

そこで営団と国鉄は、一定条件を満たした場合に千代田線の綾瀬~北千住間を国鉄線とみなして運賃計算を行う特例を設け、面倒な折り返し乗車をしなくても済むようにしました。北千住~綾瀬間はあくまで"営団の"千代田線ですが、両駅を行き来する際の運賃に営団のそれを適用すると割高なので、特定運賃として国鉄で同距離の乗車に適用される運賃と同額としました。この特例は国鉄がJR東日本に、営団が東京地下鉄になってからもそのまま引き継がれ、現在に至っています。

この北千住~綾瀬間の特例は、鉄道趣味的には非常に深いものです。皆さんも、時々思い出してみてください…。


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Posted by せう at 01:55│Comments(0)鉄道
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